村爺のちょっといいはなし

〔田舎住い28 、五重の塔の見学会 〕

整理券を渡し皆さんと1歩 1 歩塔の廻りを足場に添い昇り詰めると、最上層の屋根の上近くに出ました。
地上から拾数メートルの所でその道の先生と言うか大学生の様な若い方が次々と昇る村人に、
優しく歴史や今回の破損状況、修復にどのような事が大事かと話してくれています。

特に目に付いたのは木が倒れてきて破損した屋根の部分を、新しい木と外した元の木と巧く組み合わされている所が、如何にも修理したと言う状態を良く見られました。
それにしても昔は何の道具も無くこれだけの物を丸太から削り出し、狂いも無く作りあげたと思います。
最近の木造の家屋の屋根裏は機械で製材していますから骨組みは綺麗なものですが、
この塔の組み合わされている材木はチョンナ(昔の木を削る道具)の刃先の後も荒々しい削り後が残っています。
今の建築部材は真直ぐで平らで寸法も 1 定ですが、昔の大工さんは変形した材木なのに
そんな事を巧く技能でカバーして組み合わせています。
今の大工さんの工具箱は昔の様に肩に担いで“マイド―”と言う訳には行きません。
車一杯の電動工具類で仕事されています。

限られた初歩的な道具で時間と労力を掛けてコツコツ作り上げられた様子が良く判ります。
一口でいえば普段は見えない屋根裏や骨組みを見せて頂いているのですが、 1 つ 1 つの部材の造りがが荒々しい様に見受けられ近く出見れば美しいという言葉に詰まります。

でも表になり見える所は美しく仕上げ、見えない隠れる所は生えていた木の素材に近い状態にして、
よくもこれだけ精巧に作れるのか不思議です。 趣味で作られる工作に割りばしや、爪楊枝マツチの軸で色々なモノを作られる方が居られますが、この時代の塔は小枝を集めて切りそして削り作り上げたような物なのです。
黒ずんだ千年も古い年代の材木は沢山のヒビが走りますし、キリで突いた様な虫食い後が沢山有ります。
部分的に欠けているものも有ります。
大工さんがケチで部材を新しく作り変えずに使う、一頃問題になった手抜き工事の見本の様です。
少しでもその年代のままの部材を残すべく痛んだ材木を補強して使い、
できる限り元の部材で修復すると言う事からか破損の小さな物は使われていました。
今の建売の木造家屋は 20 年 30 年と言われるような耐久性ですが、千年も前の木材がまだ使えると言うのは不思議です。

後から後から時間を区切り村人が上がられるので今度はくだりの足場に移り降りるのですが、
最後に説明されるお兄さんが“この五重の塔は普通の建物と違い揺れるのですよ”と少し押されると塔がゆらゆらと力に応じて揺れています。皆さん驚いていました。しっかりした軸組み工法の建物が音もせず揺れています。

現役時代に建設工事で鉄塔の上で昼休みに寝転んでいると、
風が吹くたびにアンテナが風を含み少し揺れます。
フラフラ揺れるのは余り気持の良いものでは有りませんでした。
でもこの塔の構造はどのようになっているのでしょうか。
風が吹いても柳の様に風下に倒れ、地震が有っても最近の新しいビルの様にゴムの土台やコロが滑り免震構造になっているみたいです。こんな構造での建造物は始めて目にしましたし、実際に揺れる状況を見さして頂きこの日の見学会の大きな収穫でした。

下の土台部分に仏様が入れられている場所有り 1 尺四方の窓が有りました。
仏様は他にお移しされていましたが、その上に芯に成る柱が上に通っている様に聞きました。
ですから芯の柱は土台には止められず浮いているような状態です。成る程それで揺れるのか・・・そんなんで大丈夫なんやなーと感心しています。大昔のちょんまげ?の大工さんも中々遣るもんです。

完成された塔は見慣れた台風前の古色豊かと言うか五重の塔全体がくすんだ古い木の色では無くなり、塔全体は紅と軒回りが白く美しく塗り直されていました。        (続く)

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