村爺のちょっといいはなし

第二十回 今の子供は賢い!

 町や村の家の軒先で傘を修繕するおじさんが家々を「かさーしゅうぜんー、こうもりがさしゅうぜん!」と美声で回り、修理物が出されると、その家の道端に座り込み、上手に作業場を作り、修理をしていました。そして、その回りを学校帰りの私達が囲み、折れた傘の骨が次々に繋がる様子を見ながら、おじさんと他愛無い会話をして道草していました。
  今思うと、小津安二郎監督の映画の一場面のような、ゆったりした時間が流れていたように思います。道は車が走ることもなく、牛車が主役で、道の真中に丸い大きなパンのようなものが点々とありました。そこが子供の遊び場であったり、紙芝居屋さんが道を占領していたり、近辺に住む人達の出会いの場や、仕事場でもありました。

 学校の運動場は巡回映画の会場になったり、村の各地区対抗の運動会で、青年会のお兄さんやお姉さんの交流の場となったり、村民が心一つになった時代でした。また、よく講堂では、有名(?)な人の浪曲大会等があり、父親と半分居眠りを我慢しながら聞いていたことも思い出します。その頃は戦争が終り、まだ家にテレビもパソコンもない、ラジオもNHKだけという時代ですから、何か催し物があると、人々は家から飛び出して参加するのが楽しみのひとつでした。
  蛙のお尻に麦わら挿したり、カマキリのお腹から黒い紐を引き出したり、ザリガニやフナやドジョウ取りに1日中かかりきりで遊んだり…。ヒルに血を吸われる事も、ヤブ蚊に刺されても平気だった、丸刈り頭で泥だらけの汚い仲間は、今でいうアウトドアライフが大好きでした。
  それにしてもあの頃からみると、今の子供は美男美女の素質十分、綺麗で清潔で科学にも強い。今と違い、兄弟のお古の服に継ぎはぎ、穴が空き擦り減った靴や、藁草履を履いて、頭やお尻にデキモノが出来たり、蚊や南京虫に食われた跡だらけだったり、赤チンを塗るだけが怪我の処置で、カサブタが出来たら治ると包帯も巻かず走り廻っていたのがウソみたいに思います。

 その様な事を考え思い出しながら、少し遅くなった会社の帰りの電車で、体には大きすぎるカバンを肩に掛けた、小学生のような子供が数人乗って来ました。もう夜の9時を廻る時間まで勉強しての帰りのようです。そして定期入れを首に掛けているのは良く見るのですが、もう一つの紐には皆が携帯電話を結び付けています。
  私は、電話はお金持ちか商売されている家にある物と思っていましたし、電話の引くことが出来る順番も、一般の家では何年も来ない時代です。そして、学校を出て社会人になって初めて電話を使うようになり、最初は何故だか電話に出るのが怖かったのを思い出しました。それが今や小学生が電話機ぶら下げて塾通いをしているわけですから、今の子供は随分進んでいます。
 
  携帯電話もただ話を伝える電話から、現在は、情報伝達に使われる色々な機材を、あの小さな電話機に詰め込んでいます。音声、メール、カメラ、ビデオ、録音、テレビ、ラジオ、電卓、時計、鍵、リモコン、定期券、キャツシュカード等々。お店に来られる中年やお年寄りの中には話だけ出来たら良いので、「何にも付いてない電話は無いのか」と聞かれます。機能を使い切れない人達と、これらをこの年代から使いこなす子供達とは、少し異なる機種が待たれることでしょう。それにしても昔の時代を思い出す時、やはり今の子供は機戒に強く賢いように思いますが、それは私だけでしょうか。

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