村爺のちょっといいはなし

第十八回 高い所とヘリコプター

 都会には多くの高層建造物がありますがビルの屋上とかタワー、そして鉄塔に赤いランプが航空機標識として点灯しています。
  又地方に行くと、山に立つ送電鉄塔は赤い色の塗装がされていますし、無線局のアンテナの鉄塔も赤と白に塗り分けられています。その最先端やその途中には、規定に従い、赤いガラスのカバーを被せた数百Wの電球が入れられており、夜になると赤いランプが点滅する様になっています。
  中に使われているタングステン電球は、家庭の電球と同じく時間が来れば寿命で切れますが、その電球を取り替えるのには、高所恐怖症でなくても恐ろしいものです。取り付けてある場所は1番高いところであったり、建物の突き出た端であったり、高い所の、しかも足場の悪い所に、年に何度か取替え作業をしないといけないという想定を全くしていない構造での作業ですから、今思うと「良くやったな」との思いがします。中には生理的に怖い所は避けるのか、生まれた時からの親の云い付けなのか、何としてもそんな作業はしない社員もおりました。「そんなん、何が怖いねん」、と取替え作業を率先していましたが、言いつつも揺れる鉄塔の先端では下を見ると目が回りました。

 たまたま山上の工事物品輸送が終り、基地へ返るヘリコプターに乗せて貰える機会が有りました。オートバイでも、後ろに乗せて運転している人は当たり前の操従でも、後ろに乗っていると、どちらに曲がるか、止まるか事前に判らないので、怖い思いをする事がありますが、それ以上にヘリコプターは情報が有りませんから、機体が変化する度にハッとします。
  機材運搬用のヘリコプターで、荷物室兼客室に布を張ったようなパイプ椅子に、落ち着かない心境で座りました。初めての乗り物に対する好奇心で、乗り心地はどのようなものかと楽しみにしつつ…。ヘリコプターは、その時始めて知ったのですが、エンジンは一定の回転数で廻っており、羽根の角度を変えるとフワーと飛び上がります。飛行機のように飛び立つ時に全速でエンジン回転させるのでなく、上がるも下がるもプロペラの角度でコントロールするようです。

 地上にいる時は砂煙も余り立ちませんでしたが、飛び立つ時は急に空気が下に押されて砂煙と枯草を地上の人々に被せて飛び上がります。見送る人々に、こんな失礼な出発をすることは他の乗り物には、まずありません。しばらく目的の方向へ谷合を飛んでいましたが、高度が上がり最後に山を越えるのにどんどん上昇している感覚から、尾根を超えた途端、急に山裾へ転げ落ちるように降下された時は体中の血が頭に集中するような感覚になりました。
  乗せて頂いて色々勉強になりました。後ろのプロペラは機体が反動で回されないように反対方向に押さえている働きだとか、方向転換はこの回転を制御するそうです。
  頭の上で回っているプロペラは、上昇する為の働きと思いましたが、機体を垂直と言うか、真下に向けると飛行機のプロペラの様に前に飛ぶそうですが、それでは機体を支える力が無いので墜落します。そこで巧くバランスを取り、落ちないように前を下げ気味に飛ぶのだそうですが、この辺が飛行機と違い、エンジンの回転だけが頼りで常に落ちるかもと心配しまいそうです。ですが、エンジンが止ったとしても、羽根の浮力で不時着するから安心してと教えて貰いました。

 操縦士さんは、ちゃんと予定通りの飛行ルートを飛び、高い所から低い所へ移動することで余分な風を受けず、燃費も良いのでしょうが、乗客は上昇している感覚から、急に降下するので、「落ちるんとちゃうか」と一瞬余計な神経を使ってしまいます。
  車でも、助手席に乗るより運転している方が疲れないといわれる方もおられます。この辺りは、乗り物に共通する事かもしれませんが、ヘリコプターも慣れの問題とか、操縦にもよるのでしょうが、私は今思い出しても余り気持ちの良い乗り物では有りませんでした。

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